今年、2025年7月29日――もし生きていたなら、ジョン・サイクスは66歳を迎えていたはずでした。
この記事は、彼の音に魅了された方はもちろん、「名前は知っているけれど、実はあまり知らない」という方にも、あらためてその魅力をお伝えしたいと思い綴っています。
ギターやロックが好きな方、80年代のハードロックに心を揺さぶられた方へ──孤高のギタリスト、ジョン・サイクスの偉大な足跡をいっしょに振り返ってみませんか?
彼がこの世を去ったのは、2024年の暮れのこと。その訃報が公式に伝えられたのは、2025年1月20日でした。65歳という若さでの旅立ちは、多くのロックファンにとってあまりにも突然で、にわかには信じがたいニュースでした。
それでも、彼が残してくれた音楽は、今も世界中のファンの心の中で生き続けています。この誕生日という節目に、彼の功績をあらためてたどり、そのギタープレイの魅力にもう一度触れてみたいと思います。出典:[スポニチアネックス – 世界的ギタリストのジョン・サイクスさん死去 65歳(Yahoo!ニュース掲載)
誕生日に振り返る軌跡:沈黙の理由をたどる――休養、そして闘病へ

この画像は、私物の雑誌を撮影したものです。ブログでは紹介目的で使用しています
ジョン・サイクスさんが病気を発症した正確な時期については、今のところ公式には明らかにされていません。
ただし、2023年初めの段階で既に体調を崩し、闘病生活に入っていた可能性があると言われています。
元バンド仲間のカーマイン・アピスは、「連絡をしても返事がなかった」と話しており、その頃には既に健康状態に何らかの変化があったことがうかがえます。
長いあいだ公の場に姿を見せていなかった理由についても、ファンや関係者の間では「実は病気と闘っていたのではないか」という声がささやかれてきました。
ただし、サイクスさんが長く表舞台から距離を置いていたことは、以前にもありました。
たとえば、2017年4月号のヤングギター誌のインタビューでは、「シン・リジィでの活動に疲れて、少し休みたかった」と語り、「地下に潜ってビジネスから逃げていた」と冗談まじりに話しています。
当時は「心身のリフレッシュ」のためと説明されており、病気を示唆するような言葉や報道は一切ありませんでした。(※出典:『YOUNG GUITAR』2017年4月号/シンコーミュージック)
その後の活動状況や報道を踏まえると、2023年頃から体調を崩し、闘病に入っていた可能性が高いと見られています。
亡くなったのは2024年12月下旬とされており、訃報が公式に発表されたのは2025年1月20日のことでした。
現時点では、病気の診断時期や公表の詳細について、本人や関係者からの正式なコメントは出ていません。
孤高のギタリスト、ジョン・サイクス
ジョン・サイクスは1959年、イギリス・レディングに生まれました。
そのキャリアは、1980年代のブリティッシュ・ハードロック・シーンを語る上で欠かせない存在です。
Tygers of Pan Tangでプロキャリアをスタートし、Thin Lizzyへ加入。
その後、ホワイトスネイクの黄金期を支えたあと、自らのバンド「Blue Murder」を結成。
派手なテクニックと情感あふれるメロディを併せ持つギタースタイルは、多くのギタリストに影響を与えてきました。
※ジョン・サイクスの詳しいディスコグラフィや活動歴は、Wikipedia(ジョン・サイクス)でも確認できます。
なぜ“孤高”と呼ばれたのか?
テクニック、ルックス、センス…。
どれをとっても一流だったジョン・サイクスですが、どこか“表舞台から少し距離を置いた存在”という印象を持つ人も多かったのではないでしょうか。Whitesnakeを電撃脱退し、その後はBlue Murderで再出発。
しかしメディアへの露出は控えめで、SNSが当たり前のこの時代にも、彼自身の発信はほとんどありませんでした。そんな寡黙さこそが、“孤高”という言葉にぴったりだったのかもしれません。
本物のギターだけが、彼のすべてを語ってくれていたのです。
サウンドの秘密とこだわり
ジョン・サイクスといえば、黒のレスポール・カスタムが象徴的な存在です。太く伸びるサスティーンと、鋭さを併せ持ったそのサウンドは、彼独自のチューニングとタッチによって生み出されたものでした。アンプはマーシャルを基本に、SoldanoやMesa/Boogieを使い分け、高出力のハムバッカーピックアップを搭載することで、リッチでエッジの効いたトーンを実現。見た目にはシンプルな機材構成ながらも、タッチひとつで音の表情を変える繊細さを持ち合わせており、まさに“職人ギタリスト”としての魅力が光ります。
そのギターサウンドは、80年代ハードロックシーンを語るうえで欠かせない存在感を放ち続け、今もなお多くのギタリストたちに影響を与えています。ここでは、彼の機材、演奏スタイル、そして実際の楽曲とともに、音作りの核心に迫っていきます。
黒のレスポール・カスタムが生む“太くて鋭い音”
サイクスといえば、黒のGibson Les Paul Customが象徴的。
エボニー指板、ゴールドパーツを備えたこの一本は、重厚な中低域とシャープな高域を両立する“武器”でした。
使用していたのは1978年製のレスポール・カスタムが主で、ピックアップにはEMG 85(リア)を搭載。
これにより、ハイゲインでも輪郭がハッキリした太いサウンドを実現しています。
🎧 聴いてみよう:

→サイクスの代表曲。ソロ部分でEMGピックアップの持つ伸びやかなサスティーンとエッジの効いたトーンが堪能できます。
ハイゲインアンプで構築された轟音サウンド
サイクスが愛用していたアンプは、Marshall JCM800、Soldano SLO-100、Mesa/Boogie Mark IIIなどのハイゲイン機種。
とくにMesaの「Coliseum」モデルは彼のサウンドの中核とも言える存在で、パンチと伸びの両立したサウンドを生み出していました。
🔍 参考動画(解説):

エフェクトは最小限、ラック構成は高品質
ライブやレコーディングでは、Rocktron Intellifexなどのラックエフェクトを使用。
空間系は必要最小限にとどめ、“ギター本来の鳴り”を前面に出すスタイルを貫いていました。
また、ノイズゲートやパワーコンディショナー(Furman)も導入し、ハイゲインでもノイズレスな環境を整えていた点はプロフェッショナルならでは。
音の表情を決めるのは“右手のタッチ”
機材だけでなく、サイクスの真骨頂はそのピッキングアタックと表現力にあります。
右手でピックの角度や位置を変えながら、硬質なリフから柔らかいソロまで自在に操るスタイル。
🎧 聴いてみよう:

→ サイクスのリズムギターの特徴的なアタック感が、モデリング機材で再現されています。
まとめ:シンプルな構成から生まれる、唯一無二の音
ジョン・サイクスのサウンドは、一見するとシンプルな構成に見えますが、その中には卓越したタッチ、ピックアップの選定、アンプのチューニング、そして音へのこだわりが詰め込まれています。
派手さだけではない、“職人肌のギタリスト”としての深み。
だからこそ、今なお多くのギタリストが彼の音を追い求めるのかもしれません。
Blue Murderを象徴する壮大な一曲「Valley of the Kings」

この画像は、私物のCDを撮影したものです。ブログでは紹介目的で使用しています
ジョン・サイクスが率いたバンド、Blue Murder の代表曲といえば、やはりこの「Valley of the Kings」。
1989年リリースの1stアルバムの1曲目に収録されており、冒頭の幻想的なギターリフからすでに“ただのハードロックではない”ことを感じさせてくれます。
この曲の魅力は、サイクスらしい重厚で中東風のスケール感あるギターサウンドだけでなく、彼が自ら担当したヴォーカルの表現力にもあります。
ホワイトスネイク時代までギタリストとして知られていた彼ですが、Blue Murderではリードシンガーを務め、その歌声は力強さと繊細さを兼ね備えたエモーショナルなもの。
とくに「Valley of the Kings」では、ギターとボーカルの両方で曲のドラマチックな展開をリードしています。
壮大でありながら、哀愁も漂うこの楽曲は、“ギタリスト”としてのサイクスはもちろん、“ボーカリスト”としての彼の魅力も存分に味わえる名曲です。
🎧 YouTubeで聴いてみる:

私がジョン・サイクスにハマった瞬間
私がジョン・サイクスの音楽に本格的にのめり込んだのは、Blue Murder(ブルー・マーダー)を聴いたのがきっかけでした。
もちろん、ホワイトスネイクで彼がギターを弾いていたことは知っていましたし、ヒット曲も耳にしたことがありました。でも、自分の中で「この人すごいな…」とぐっと心をつかまれたのは、ブルーマーダーのデビューアルバムを聴いたときなんです。
それまでは、「ギターが上手い人」というイメージが強かったので、ヴォーカルもしていると知ったときは正直「大丈夫かな?」なんて思っていたんです。
でも、実際に聴いてみたら──完全にやられました。
彼の歌声って、ただ上手いだけじゃなくて、どこか色気があって、深みもあって。
しかも歌いまわしが自然で、言葉がすーっと心に入ってくるんです。
ギターの音も歌も、全部まとめてサイクスの世界になっていて、それがたまらなく心地よくて…。
『Blue Murder』を初めて通して聴いたとき、「これはドンピシャすぎる…」と、本当に鳥肌が立ちました。
ギターの音作り、曲の空気感、そしてあの歌声──私の音楽の“ど真ん中”を突いてきたような感覚でした。
その後に出た『Nothin’ But Trouble』もよく聴きましたし、すっかりサイクス沼にハマっていたんですが、そこからしばらく目立った活動がなかったのが、ちょっと寂しかったんですよね。
そんなときに発行されたのが、『ヤング・ギター』2017年4月号のインタビュー記事。
「あ、帰ってきたんだ…!」と嬉しくなって、雑誌を読みながら何度もうなずいたのを覚えています。
でも、そのあとまた長い沈黙が続いて、そして2025年1月。まさかの訃報。
噂では「体調がよくないらしい」と聞いていたけれど、本当だとは思いたくなかった。
あのときは、本当に言葉が出ませんでした。
今でもサイクスの曲を聴くと、胸の奥がじわっと熱くなる時があります。
でも同時に、「この人の音に出会えて良かった」と思えるんです。
ギターも歌も、私にとっては音楽を好きになる原点のひとつ。
これからもずっと、彼の音は私の中に生き続けていくと思います。
まとめ:ジョン・サイクスの誕生日に、もう一度その音に触れてみよう
2025年1月20日、がんとの闘いの末に、ジョン・サイクスは静かに旅立ちました。
あれから半年──。
今年の7月29日。
もし生きていたら、66歳の誕生日を迎えていたはずです。
ぜひこの日に、たった一曲でもいいので、ジョン・サイクスの音を聴いてみてください。
あの力強くて美しいトーン、そしてギターに込められた想いを、今あらためて感じてみてほしいのです。
彼が奏でた音は、今も世界のどこかで誰かの心を動かし続けています。
ロックを愛し、ギターに命を注いだ一人の男の足跡は、これからも色褪せることなく、響き続けるでしょう。
最後に、そっと心に響く、あの来日シーン
貴重映像:12弦ギターでの弾き語りシーン
来日した際に披露されたこの演奏は、ジョン・サイクスの多面的な魅力が感じられる貴重な映像です。
12弦ギターの豊かな響きと、丁寧に語りかけるような歌声。
派手なギターソロとはまた違う、繊細で温かな音の世界が広がっています。


サイクスの“音”が、あなたの心にもそっと届きますように。
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