「観光客に見えて、実は泥棒──?」
そんな信じがたいような現実が、いま世界で静かに広がっています。
先日、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸選手の自宅が、強盗未遂の被害に遭ったというニュースが報じられました。
早朝、3人組の不審者が敷地内に侵入し、ガラス扉を破壊。幸い、室内のスタッフの機転で大事には至りませんでしたが、その背後には「バージャリーツーリズム(Burglary Tourism)」と呼ばれる新たな国際的犯罪の存在が見え隠れしています。
“旅行”という名目で入国し、短期間のうちに複数の住宅に侵入しては窃盗を繰り返し、証拠が残る前に出国──。
あなたの隣にも、そんな“観光客を装った泥棒”が訪れているかもしれません。
本記事では、この「バージャリーツーリズム」という新たな犯罪の手口と背景について詳しく掘り下げていきます。
盗みのために旅をする「バージャリーツーリズム」とは?
「Burglary Tourism」は直訳すると「空き巣観光」。
つまり、盗みに入ること自体が目的の“観光”です。
この手口では、犯罪グループが短期ビザや観光目的で入国し、現地の住宅街や高級エリアを下見。
SNSやメディアから得た情報を頼りに、有名人や富裕層の自宅を狙って侵入・窃盗を行うのです。
犯行を終えると、証拠が残らないうちに母国に出国して逃亡──。まさに、今の時代ならではの犯罪スタイルと言えるでしょう。
ターゲットは誰? 有名人だけじゃない
一見、「そんなのセレブやスポーツ選手だけの話でしょ?」と思われがちですが、実はそうでもありません。
もちろん、有名人は狙われやすい存在です。
たとえば2025年7月には、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸選手の自宅が、3人組による強盗未遂事件の標的になったと報じられました。
山本選手はそのとき遠征中で不在。室内にいたスタッフが異変に気づいて照明をつけたことで、犯人たちは何も盗らずに逃走しました。
このように明らかに“計画的”な犯行が、世界中のセレブ宅で相次いでいるのです。
ですが、SNSで「○日から旅行です」「家を空けます」と投稿してしまった一般人の自宅が狙われたケースも、すでに複数確認されています。
実際に起きたバージャリーツーリズムの事件例
2025年2月:チリ国籍のグループがプロ選手宅を狙い摘発
アメリカ・フロリダ州で、チリ出身の7人組がNFLやNBAのスター選手の自宅を標的に窃盗を繰り返していたとして起訴されました(米司法省より)。
FBIや米司法省の発表によると、被害総額は約200万ドル(約2億7,000万円)にも上るとのことです(米司法省発表)。
具体的な被害対象には、カンザスシティ・チーフス、シンシナティ・ベンガルズ、ミルウォーキー・バックスといった有名チームの選手宅が含まれており、
選手が遠征などで不在中を狙って、宝飾品や高級バッグなどを盗み出したとされています。
同様の手口は全米に拡大中
この事件は1件だけの特殊例ではありません。
FBIは、こうした犯行は“South American Theft Groups(SATG)”と呼ばれる南米系の犯罪ネットワークによるものと見ており、複数の州を移動しながら短期間に多数の住宅を狙う「犯罪観光」型の侵入窃盗が急増していると警告を出しています。
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出典:米司法省(justice.gov)
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参考:VPM、ICE、Wikipedia、Los Angeles Times
なぜ摘発が難しいのか?
理由 | 内容 |
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短期間で出国 | 犯行からすぐ出国するため、捜査が追いつかない |
偽造IDの使用 | 複数の身分を使い分け、正体の特定が困難 |
証拠隠滅が早い | 盗品や証拠をすぐ移送・処理してしまう |
英国・オーストラリアでも同様の手口が
オーストラリア・メルボルンでは、イギリス国籍の4人組が“観光客を装って”20件以上の住宅侵入を行い逮捕されました。
イギリスでも、都市部で高額な窃盗事件が報告されていますが、SATGとの関連はまだ明らかにされていません。
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出典:9news.com.au・VPM
SNSやネットの情報が“武器”になる時代
バージャリーツーリズムに使われる「下見」は、もはや現地を歩く必要すらありません。
スマホひとつでGoogleマップやインスタグラム、TikTok、YouTubeから──
すべて把握できてしまいます。
私たちが何気なく投稿した「今、◯◯に来てます!」というSNSも、泥棒にとっては“今、家にいません”という情報そのもの。
防ぐために、私たちができること
どれだけ技術が進んでも、まず大事なのは意識することです。
こうした地道な工夫が、犯罪抑止につながります。
安心して暮らすために──「防犯」は日常の一部へ
筆者自身、学生時代に自宅が泥棒に入られた経験があります。
留守中に1階のお店部分が荒らされ、翌朝その惨状を見て「安心って脆いものなんだ」と実感しました。
それ以来、防犯意識は自然と高くなりましたが、今回のように国境を超える犯罪の話題に触れると、「今の備えだけで十分なのかな?」と、改めて考えさせられます。
「安心して暮らす」ことは、もはや“自然にあるもの”ではなく、意識して守るべきものなのかもしれません。
まとめ:知ること”があなたの暮らしを守る第一歩
バージャリーツーリズムは、「海外の一部で起きている特別な犯罪」ではありません。
ネットと世界が密接につながった今、私たちの日常と地続きの場所で起きている“すぐ隣の危険”でもあります。
SNSに投稿した旅行写真、何気ない「今、外出中です」という一言──
それらが、思わぬ形で“空き巣観光客”に利用されてしまう時代です。
でも、必要以上に恐れることはありません。
大切なのは、「知っておくこと」「気をつけること」「備えること」。
それだけで、守れる安心がたくさんあります。
今回ご紹介したバージャリーツーリズムの実態が、「自分には関係ない話」から「自分ごと」として考えるきっかけになれば嬉しいです。
そしてこの記事が、あなた自身や、あなたの大切な人の暮らしを守るための小さな防犯意識のスイッチになれば幸いです。
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